旨い魚のヒミツ

鮮度がよい魚=おいしい魚 だと勘違いしてませんか!?

おいしさとは

味・食感・匂い・見た目が大きく関わっています。(他にも雰囲気や値段等で惑わされるときもありますが。)旨味成分として、昆布のグルタミン酸やかつお節のイノシン酸、甲殻類のアデニル酸、などが挙げられます。

他にも、食感は非常に重要で、硬いのか、柔らかいのか、他には温度も関係してきます。スジで固いマグロの刺身はおいしくなく、凍っているお刺身もおいしくありません。

匂いも重要で、魚が苦手だという人は、生臭いから嫌いだという人もいます。また、日本人ですから、見た目も重要視します。折角食するのですから、きれいに盛りつけされているほうが、食欲が湧きおいしさに拍車をかけるものです。

鮮度とは

魚は鮮度がよくないと、刺身などでは食べられません。なぜかというと、陸上の畜肉と違い、熟成のスピードが全く違うからです。鳥や豚、牛などは、一定期間寝かせておいたものがスーパーに並びますが、一般的な水産物は生のものであれば数日でスーパーに並びます。

魚肉中では、ATP(魚肉中のエネルギー) → ADP → AMP(アデニル酸) → IMP(イノシン酸) → イノシン(HxR) →ヒポキサンチン(Hx)と分解が進んでいくことが知られています。魚が死ぬとエネルギーであるATPが減少し、旨味成分のAMPとIMPが増加・蓄積します。その後、さらに時間が経過するとイノシン・ヒポキサンチンが生成され、鮮度が低下していくのです。イノシンやヒポキサンチンが増えてくると魚は刺身で食べられなくなってきます。これを鮮度低下の指標として、研究などで用いられているのがK値です。

K値=(HxR + Hx)/(ATP + ADP + AMP + IMP + HxR +Hx)×100

※魚類の場合
IMP:イノシン酸  HxR:イノシン  Hx:ヒポキサンチン

K値が低いほど鮮度がよく、K値が高ければ鮮度が悪いことを示します。一般的に刺身は20%以下、すし種は40%程度、焼き魚は60%以下、腐敗は80%以上とされ、魚が新しいほどK値は低いのです。

おいしさの秘密はIMP(イノシン酸)

魚体内にあるエネルギーであるATPが多ければ多いほど、旨み成分であるIMP(イノシン酸)に多く変わります。しかし、ストレス(狭い水槽や環境の違うところで飼育する等)を与えると、ATPの生成に影響を与えることが知られています。また、苦悶死(魚を暴れさせて死なせる)させるとエネルギーであるATPを消費してしまい、生成されるIMPも減少してしまいます。

一番よい方法

暴れさせないで血抜き(魚体内にある血を抜くこと。これをしないと臭みの原因になってしまいます。)を行い、脊髄を破壊し、死後硬直から解凍(死後硬直後に起きる魚体が軟化する現象)までの時間を長引かせることです。また、適正に処理した魚を輸送・貯蔵する時間で適度に熟成を進めることで、一番美味しくいただけるのです。

お店の中や外に展示されている小さな水槽で飼育されている魚を見たことがある方もいるかと思います。あの魚は決して美味しい魚とは言えないことがわかったかと思います。食感のみを楽しむのであれば、良いかとは思いますが。

魚の味を知っている漁師は、獲れてすぐの魚を食べません。なぜなら適切な方法で寝かせたほうが美味しいことを知っているからです。また、釣りたての魚を食べたことのある方は、わかるかと思いますが、グニグニしていて美味しいとは言えなかったのではありませんか?

魚も個体により、若くて元気なヤツと年を取っていてヨボヨボなヤツもいます。痩せている魚もいれば、食いしん坊のメタボな魚もいます。当然食べておいしいのは、元気で適度な脂が乗っているほうが美味しいです。

毎日魚を見ている漁師だからわかる個体間による違い。一般人には、同じ魚にしか見えないかもしれませんが、数多く取れたその日の漁獲中で、抜群にいいものだけを、血抜き・即殺・適切な保存方法をすることで、おいしい魚を届けます。


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